根管治療
before
after
年齢 | 62歳 |
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性別 | 女性 |
治療内容 | 治療前は歯茎に腫れがあり化膿していましたが、根管治療後、腫れがおさまりました。 |
治療期間/回数 | 2ヶ月 5回 |
費用 | 80,000円+消費税 |
注意点/デメリット | 1回の治療時間が60~90分と長時間となり、大臼歯のような複根歯の場合複数回(この症例では5回)必要となる。 |
根管治療とは、歯の神経や血管が入っている非常に細い管(歯髄)の内部を殺菌し、感染を取り除くための治療です。根管治療は本質的にかなり予測可能であり、80~90%の成功率が報告されています1~3)。そしてこの高い成功率を達成するためには
・「CT」による正確な診査診断
・「ラバーダム」による感染防止対策
・「マイクロスコープ」を用いた拡大視野下での治療
・「ニッケルチタンファイル」を用いた精度の高い処置
・「MTA」薬剤による殺菌と緊密な封鎖による再感染の防止
という各要素がすべて確立されることが必要と考えています。
根管治療には精密な処置が必要です。このため診査診断が重要であり、CTから得られる情報が非常に有効です。
根管治療には専門的な知識と技術によるラバーダム防湿法とマイクロスコープの利用が重要だと考えており、当院では次のことに取り組んでいます。
従来のレントゲン写真では、歯と周りの骨を2次元でしか把握できませんでしたが、CT画像では3次元的に歯周病の骨欠損、歯根の形態、根管の走行、根尖病変の広がり、インプラントのための骨量や骨形態の診査、神経や血管の走行の状態を把握することが可能になりました。これにより診断と治療の質を高めることが可能になりました。
マイクロスコープは視野を数十倍にも拡大できる装置で、用途や症例に合わせて拡大率を操作することができますし、患部を明るく照らしてくれる機能もあります。そのため、非常に細くて肉眼で感染部を見ることができない根管治療で大きな力を発揮します。画像を保存できるので、患者さんへの説明にも便利です。
根管の内部に唾液が侵入すると細菌も運ばれてくるので、当院ではラバーダムというゴムのシートを使って、根管治療を行う歯に唾液が触れないようにカバーします。感染防止の他に、周辺の歯肉や舌を傷つけない作用もあります。
適宜、対応が可能な場合がございます。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
上記のように多くの利点を持つ根管治療時のラバーダム防湿は根管治療の成功率を有意に高めることが報告されています。1),3)
このため根管治療におけるラバーダム防湿は日本歯内療法ガイドライン、ヨーロッパ歯内療法学会ガイドライン、さらに米国歯内療法学会ガイドラインのいずれにおいても必須と明記されています。3)
前述のように根管治療の成功率は80~90%であることが示されていますが、日本においては年間1300万件以上の根管治療が行われ、その根管治療の成功率は下グラフに示されているように50%を下回り、失敗率は60%前後に上ります。3)
なぜでしょうか?
日本では根管治療の成功率が低いというデータもあります。これはラバーダム法やマイクロスコープの活用などの有効な手段がまだまだ浸透していないことが理由だと予想できます。当院では、患者さんにより良い診療を提供するために、利用できる手段は積極的に採用しています。
根管処置歯における根尖部X線透過像の発現率(須田 2011年より)
日本ではラバーダム防湿を経験したことがある患者さんは稀なのです。
以下の表に示すように実は実際にラバーダム防湿を「必ず使用する」のは一般歯科医師で5.4%日本歯内療法学会会員でさえ25.4%に過ぎなかったと報告されていて、4)このことがその大きな理由の一つだと考えられています。3)
また保健診療における根管治療の評価が低いため(米国の7分の1以下)、根管治療に十分な時間をかける事が難しいことも一因と考えられます。3)
(参考文献)
1)Van Nieuwenhuysen, J.P., M. Aouar, and W. D’Hoore, Retreatment or radiographic monitoring in endodontics. Int Endod J, 1994. 27(2): p. 75-81.
2)LEWIS RD, BLOCK RM: Management of endodontic failures. Oral
Surgery, Oral Medicine and Oral Pathohgii 66, 711—21, 1988
3)須田英明 : わが国における歯内療法の現状と課題. 日本歯内療法学会雑誌, 2011. 32(1): p. 1-10.
4)吉川 剛正, 佐々木 るみ子, 吉岡 隆知, 須田 英明:根管処置におけるラバーダム使用の現状.日歯内療法誌,24:83-86,2003.
5)Whitten BH et al : Current trend in endodontic treatment : report of a national surgery. J Am Dent Assoc,127:133-1341,1996
「ファイル」とは、根管治療に使用する非常に細い棒状の医療器具です。ファイルは弾性が高く、根管に沿ってしなる特性を持っているので、根管内の清掃に有効です。ファイルには、ステンレス製とニッケルチタンと言う合金で作られたものがあります。
虫歯の侵食が神経に達している場合、根管治療が必要です。治療ではまず、細菌に感染した部位の除去から始めます。
根管内の虫歯の原因菌により感染した歯の神経や血管、歯質をニッケルチタンファイルや超音波振動チップなどを使って丁寧にしっかり除去します。
根管は非常に細く、枝分かれしていたり曲がりくねったりしていることもあるので、薬液を使った洗浄も有効な手段です。
根管治療が終わったら、その上に土台(コア)を立てて、被せ物を装着して歯の機能を回復します。
ファイバーポストを用いた支台築造
利点
欠点
参考文献:2013年における”歯根破折防止策の文献的考察 峯 篤史
https://www.dropbox.com/s/bvlm6q5syvzf2dx/2013%20%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%AD%AF%E6%A0%B9%E7%A0%B4%E6%8A%98%E9%98%B2%E6%AD%A2%E7%AD%96%E3%81%AE%E6%96%87%E7%8C%AE%E7%9A%84%E8%80%83%E5%AF%9F.pdf?dl=0